~1~
とあるリフォーム番組を観て興味が湧いたから、屋敷を改築してみたけれども
それよりもまずお腹が減った。
背中に乗って部屋を回りながら、そんなことを考える。
~2~
「もう大体見終えたかしら。お腹空いたし食堂行かない?」
「えっ!?い、いや、この先にも見てもらいたい部屋がまだありまして……」
さっきも同じ返事だったような。反抗期かしら?
それよりもまずお腹が減った。
~3~
「じゃあ、その見せたい部屋とここを繋げて。それで残りは食事の後で」
「……い、いえ!このまま歩いた方が手っ取り早いですよ」
夕飯が多かったか、それとも拾い食いでもしたのかしら?
それよりもまずお腹が減った。
~4~
「ねえ、それじゃ食べながら見て回るわ。ほら、何か持ってきなさいな」
「……こ、この辺りの部屋は飲食禁止なんですよ」
自分の家のルールをオマエに決められる謂れはない、と思うけど
それよりもまずお腹が減ったと思うけど
これ以上の繰り返しはお腹が減るだろうから、ひとつ話題を変えてみる。
~5~
「明日みんながこの屋敷に来たら、きっと驚くでしょうね」
「いえ、きっと誰も気が付きませんよ。みんな、ご主人の意地の悪さをよく知って……
いやいや、この家の仕掛けを怖がっていますから。家の中どころか、辺りに近付く者すらほとんどいません」
「青い人が来るんじゃない?」
「確かに、散歩中のあの人をよく見かけますけど……
でもこの間は勝手に上がり込んだくせに、出るのが面倒だと怒られたしなぁ。来なくて良いです」
「この屋敷のデザイン、我ながら素敵よね。私も匠になろうかしら?」
「言われたとおりにやりましたが……でも、これって
どう考えても住んで暮らすには向いてな「ところで、お腹空かない?」
「す、空いてません!」
……駄目だった。