困ったことになった まず一つに屋敷が広い
本来、自分は屋敷内を自在に移動できるのだが 今は肝心のその能力が使えない
とあるマジックアイテムで能力を解放するのだが そのアイテムをなくしてしまったのである
「屋敷を案内する」という名目のもと密かに探している最中だが この言い訳はそう長くはもたない
困ったことになった まず一つになくした場所を思い出せない
この屋敷は相当に広い 自分で空間を弄って広くしたのだから間違いない
どこかの部屋に置き忘れたと思うのだが その場所をどうしても思い出せない
今はまだご主人も気が付いていないだろうが この失態はそう長くは隠せない
困ったことになった まず一つに部屋の造りが捻くれている
ご主人の意地の悪さは随一であり 屋敷にもその性質が存分に反映されている
匠がどうとか戯言を言っていたが 本当は来訪者を迷わせたいだけなのだ
誰も来ないだろうと言われたとおりにやったが まさか自分がさまよう羽目になるとは考えていなかった
困ったことになった まず一つにご主人がお腹を空かせている
ご主人は普段から行動が読めないが お腹が空くとそれに拍車が掛かる
ご飯が食べられないことがバレたら 何をしだすか分かったものではない
屋敷を消し飛ばすか食料変化魔法を乱発するか 何にせよ自分が無事でいられる自信がない
困ったことになった まず一つにご主人の機嫌が悪くなっている
ご主人の行動は普段から凶悪極まるが 機嫌を損ねると更に拍車が掛かる
空腹な上にご機嫌斜めでは 何をされるか分かったものではない
比喩ではなく言葉通りに 自分がご主人に料理される可能性すら有り得るのだ
困ったことになった まず一つにお腹が空いた
しかしどれだけ飢えようとも 事実を打ち明けるのは危険すぎる
それよりもご主人を食らってしまえば ひとまず目の前の危機は回避できるのだが
おっと、そんな夢物語よりも、まずは自分の命が大事だ ベル、どこだ?